Vol.11 「子供たちへのワクチン接種はいつ開始される?
その必要性は?」
2021年4月1日 最終更新 セルスペクト(株)科学調査班編集
(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)
新型コロナワクチンの接種は世界でこれまでに3億4500万回に達しています。ワクチンの安全性と有効性判定のため、小児向けの臨床試験が進行中です。小児へのワクチン接種に関して、専門家は次のようなことを述べています。
• 子供と大人でワクチンの効果が異なるのか?
子供の免疫の仕組みは大人のものと大きく異なり、乳児期から10代まで、年齢によって異なります。子供の免疫は未熟で予測が難しいため、ワクチンの効果や、成人には発生しない副作用がある可能性があります。したがって、米国食品医薬品局は、すべての新しいワクチンを認可する際には、子供に対しても十分な確認試験をするよう要求しています。
• なぜ子供へのワクチン接種が重要なのか? そもそも必要なのか?
18歳未満の子供は人口の20%以上います。新型コロナウイルスのパンデミックでは、成人よりも小児の方が経過は良好ですが、この20%の人がワクチン接種を受けていなければ、感染拡大が継続する可能性があり、たくさんの人が免疫を獲得することで感染拡大が収束する効果(→集団免疫)を得ることが困難になると指摘されています。科学者は、集団免疫を獲得するには、人口の70〜90%が新型コロナウイルスに対する免疫を持つことが必要であると推定しており、特に今後広範囲に蔓延すると予想される、より感染力の強い変異株に対応することも必要です。集団免疫を獲得するために、子供にもワクチン接種をする必要があることは確実であると考えられています。
• 子供たちへのワクチン接種が始まるのはいつ頃? 現状は?
すでにファイザー社製ワクチン(→現在、日本でも接種されているmRNAワクチン)は16歳から、モデルナ社製(mRNAワクチン)は18歳から接種が認められています。
これまでに、ファイザー社とモデルナ社はともに12歳以上の小児を対象とした試験への登録を完了し、そのデータは今夏に発表される予定です。
(→ファイザー社とモデルナ社は、55,000名の成人ボランティアを第3相臨床試験に参加させるのに数ヵ月かかりました。この2社は、青年期の試験でそれぞれ約3,000名と2,600名の参加者を得ました。研究者たちは、成人を対象とした臨床試験とは異なり、臨床試験参加者が新型コロナ感染者と接触し、ワクチンの有効性を判断することを待ちたくないと考えています。代わりに、子供の免疫反応を測定し、大人の免疫反応と比較し、もし子供が同じ免疫反応をするなら、同じウイルス防御能を得た、と推定します。先ごろ、モデルナ社は生後6カ月から11歳までの小児を対象とした臨床試験を3月18日に開始し、ファイザー社は5歳から11歳までの小児を対象とした臨床試験を早ければ3月内に開始する、と発表しました。)
学校生活を元通りにするために、さまざまなワクチンメーカが子供への試験を急いでいます。「12歳以上の子供たちには、今秋からワクチン接種が行われる予定です。それ以下の年齢の子供たちに対しては2021年末から2022年初めとなる可能性が高いですが、それよりも少し早くできるかもしれません」とファイザー社は述べています。
(注意:本稿は日本国外での事例となっています。日本ではまだ子供へのワクチン接種について公式な見解は発せられておりません。)
引用文献:
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U.S. Food and Drug Administration: FDA https://www.fda.gov/
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Respective vaccine companies
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Clinical trial data: https://www.clinicaltrials.gov/
Vol.12 「新型コロナウイルス感染症による"メンタルヘルスパンデミック"の危険性」
2021年4月9日 最終更新 セルスペクト(株)科学調査班編集
(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)
・新型コロナウイルスによる「メンタルヘルスパンデミック」
新型コロナウイルスは、高齢者には肉体的リスクを、若年層には精神的なリスクを与える可能性が高いとも言えます。恐怖・心配・ストレスは、予期される脅威や現実に起こっている脅威に対する正常な反応ですが、不確実性や未知のものに直面した場合にも生じます。例えば、パンデミックの渦中においては、ウイルスに感染する恐れに加え、ウイルス封じ込め、蔓延防止のために移動が制限されることで、私たちの日常生活に大きな変化を強要しました。パンデミックの長期化によって、先行きが見通せず、公衆衛生対策によって生活が抑制されることで、孤立や失業などのメンタルヘルス問題に直面しやすい状況となっています。
・女性と若年層における自殺者が増加
厚生労働省は3月、2020年の自殺者数の最終統計を発表しました。全国の昨年の自殺者数は21,081人で、2019年から912人 (4.5%) 増加しました。特に若年層と女性の増加が目立っており、女性の自殺者数は15%増加、子どもや高校までの学生の自殺者数は過去最高となりました。
(20歳未満では311人44%、20歳代では837人32%前年より増加した。職業別で見ると、就業者は1,534人 (34%) 、主婦が1,168人 (14%) 、学生は387人 (44%) それぞれ増加した。さらに、子供の自殺も増加しており、小学生14人 (+6) 、中学生146人 (+34) 、高校生339人 (+60) の合計499人で、これは前年比25%増であり、1978年に統計を取り始めて以来の高水準となった。)
早稲田大学 上田路子准教授の研究によると、日本での自殺者数は一回目の緊急事態宣言解除後の2カ月間で大幅に増加し、人数的には過去3年間の同月平均より7.72%増加しています。特に、40歳未満の女性の増加率は全年齢層の中で最も高くなっています (63.1%) 。「緊急事態宣言が解除されても経済などへの影響は続くので、かなり気をつけて見ていかないといけない。困った人が支援を求めやすい社会をつくることが大事で、就業支援や相談体制を拡充した上で、周りに困った人がいたらひとりひとりが気にかけるなどして社会全体で支える態勢を整えることが必要だ」 と上田准教授はコメントしています。
・世界で起こる「メンタルヘルスパンデミック」
この現象は日本だけではありません。実際に 「メンタルヘルスパンデミック」 が世界中で起きています。米国疾病予防管理センターの調査によると、新型コロナウイルス感染症の拡大と共に、大学の閉鎖、在宅勤務への移行、収入や雇用の喪失といったパンデミックに起因する生活への影響が発生しています。そしてこのような生活環境の変化と同時に、不安、抑うつ、睡眠障害、自殺を考える米国若年成人の増加していることから、精神健康面の悪化には、新型コロナウイルス感染症に一端がある可能性があります。
(2020年6月に米国で行われた初期段階の調査では、若年成人では全成人と比較して同様の所見がみられました。この調査ではまた、薬物使用と自殺念慮が特に若年成人に顕著であり、25%が感染拡大期間中に薬物使用を開始した、あるいは使用量が増加したと報告し (全成人では13%) 、26%が自殺を真剣に考えたと報告しました (全成人では11%) 。新型コロナウイルス感染拡大前も若年成人は精神障害や薬物使用のリスクが高いのですが、その多くは治療を受けていません。)
・WHOからもメンタルヘルス対策ガイドラインが発行
WHOによると、多くの国 (70%) で対面診療ができないことを克服するために遠隔医療または遠隔治療を採用していますが、これらの介入の受け入れには大きな格差があります。WHOは、メンタルヘルスサービスを含む医療サービスを新型コロナウイルス感染症蔓延下でどのように維持するかに関したガイダンスを発行し、各国が対応・復興計画の不可欠な要素としてメンタルヘルスサービスに資源を割り当てるよう勧告しています。WHOはまた、各国が必要に応じて対応できるよう、サービスの変化や中断を監視するよう求めています。
まとめると、新型コロナウイルス感染症は肉体的にも精神的にも大流行を引き起こすことは明らかで、精神疾患の影響はより強く、広範囲に及びます。メンタルヘルス診断・治療のための資源を増やし、この感染拡大により引き起こされるメンタルヘルス疾患対処のために、遠隔医療の利用拡大を、我々は念頭に入れるべきです。
引用文献:
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U.S. CDC: CDC https://www.cdc.gov/
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Michiko Ueda. “Japan’s suicide rate highlights the other health challenges stemming from the pandemic” Washington Post, Dec. 30, 2020
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WHO: https://www.who.int/
Vol.13 「新型コロナウイルス感染症と大気汚染との関係」
2021年4月16日 最終更新 セルスペクト(株)科学調査班編集
(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)
・PM2.5とは?
PM2.5は、大気中に浮遊している直径2.5μm(1μm(マイクロメートル)=1mmの1000分の1)以下の超微小粒子です。超微小粒子は、工場、自動車、船舶、航空機などから排出される煤、粉塵、硫黄酸化物 (SOx) などであり、大気汚染の原因となります。大気中のPM 2.5濃度は季節により変動し、例年、3月から5月にかけて濃度が増加する傾向にあります。また、地域によっても差があります。お住まいの地域におけるPM2.5の濃度は、環境省大気汚染物質広域監視システムAEROS (http://soramame.taiki.go.jp/)のサイトで確認することができます。
・大気汚染と新型コロナウイルス感染症の重症化
昨今、PM 2.5による大気汚染が新型コロナウイルス感染症をさらに悪化させるかもしれない、と懸念されています。最近の研究によると、大気汚染と新型コロナウイルス感染症重症化との関連性が指摘されており、すべての人にとって健全な空気を確保することが重要である事がわかってきています。
2020年9月に発表された米国ニューヨーク州立大学ESF校での研究では、有害大気汚染物質への曝露機会の増加により、新型コロナウイルス感染症による死亡例が9%増加した、と報告されました。この増加は貧富の差やその他の健康上の理由ではなく、有害大気汚染物質が原因であると報告されています。これは、大気汚染指数が高いほど、呼吸器系のストレスにより新型コロナウイルス感染症が重症化する、と考えられています。
2020年12月に行われた別の調査では、世界中の疫学データ、人工衛星からのデータ、その他のモニタリング情報を組み合わせて分析し、研究者らは新型コロナウイルス感染症による全世界の死亡例の内、平均して15%が大気汚染への慢性的曝露に関連している可能性があると推定しました。(本研究では、結果を地域別および国別に分類しています。大気汚染が関連する新型コロナウイルス感染症の死亡例は、例えば中国で27%、米国で18%、メキシコで15%、英国で14%、イスラエルで6%、そしてニュージーランドではわずか1%でした。研究者たちはまた、化石燃料に関連した大気汚染と、その他の人為的な大気汚染源とを区分しました。米国では、新型コロナウイルス感染症の死亡原因の15%が化石燃料による大気汚染によるものでした。)
さらに、ハーバード大学公衆衛生大学院の研究者らは、長期に曝露する超微小粒子汚染の平均量が1μg/m3というわずかな増加だけでも、新型コロナウイルス感染症死亡率が11%増加することに関連していることを発見しました。調査対象となったのは 3,089 の郡で、米国人口の 98%を占めています。
最近、京都大学大学院環境衛生学の高野博久教授が率いる研究グループは、PM2.5により新型コロナウイルスが細胞へ感染しやすくなることを発見しました。この研究成果は国際学術誌「Environmental Research」に掲載されました。(高野教授らによると、新型コロナウイルスが体内に侵入する際に、感染した標的(宿主:ヒトまたは動物)の細胞内にあるACE 2とTMPRSS 2という2つの分子が重要となります。この2つの分子が多いほど、感染症を引き起こす可能性が高くなります。研究グループは、大気中からサイクロン法で採取したPM2.5を吸入したマウスの肺のその後の変化を調べました。結果として、ACE 2とTMPRSS 2は、特に肺拡張を維持するために非常に重要な細胞であるII型肺胞上皮細胞で増加します。このため、超微小粒子により新型コロナウイルスの侵入を容易にしていることが推察されます。)
このように、新型コロナウイルス感染症対策としても、清浄な空気を呼吸することが、非常に重要である事が明らかになりつつあります。
引用文献:
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Tomoya Sagawa et al. “Exposure to particulate matter upregulates ACE2 and TMPRSS2 expression in the murine lung” Environmental Research Volume 195, April 2021, 110722.
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Editorial Staff, January 4, 2021. “Understanding the link between COVID-19 Mortality and Air Pollution” アメリカ肺協会
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環境省大気汚染物質広域監視システムAEROS (http://soramame.taiki.go.jp/)
Vol.14 「人獣共通感染症出現の主な原因は、人口増加および高い人口密度である」
2021年4月23日 最終更新 セルスペクト(株)科学調査班編集
(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)
シドニー獣医科学学校の新たな研究によると、人類はさらなるパンデミックを引き起こしかねない環境を作りつつあります。彼らの新しいモデリングによると、生態系の変化、気候変動および経済発展が、病原体を多様化させる重要な因子であることを示しています。病原体の多様化は、新しい病気の発生につながる可能性があります。この研究は、国際学術誌 「Transboundary and Emerging Diseases」 に発表されました。(この研究では、感染モデルを開発するために、13,892 の固有の病原体の組み合わせと 49 の社会経済的および環境変数を使用しました。190 カ国からの情報を元に、統計モデルを用いて分析し、新興感染症および人獣共通感染症 (動物と人間の間で感染する病気) の原因を同定しました。)
人口が増えると、住宅需要も増える。この需要を満たすために、人間は野生生物の生息地を開発する。これは、従来人間と接触がなかった野生生物との接点が増え、野生生物から新しい病気をうつされる可能性を高めます。この研究を実施した、感染症専門家であるワード教授は、この感染モデルについて、次のように述べています、「今日まで、このような生活環境と関連づけられた感染モデルはなかったため、なぜ新しい病気が発生するのか理解が難しかった。この感染モデルは、次の新型コロナウイルスのような感染症の拡散防止に有効です。」
また、この研究によると、土地面積が広く、人口密度が高く、森林面積が大きい高所得国では、人獣共通感染症の多様性が大きいことを発見しました。また、人口と人口密度の増加が人獣共通感染症の出現の主要な推進力であることを明らかにしました。世界人口は 1900 年の約16億人から今日の約78億人に増加し、生態系に圧力をかけ続けています。
研究者たちはまた、気温や降雨量などの気象要因が、人間の病気の多様性に影響を与えている可能性を指摘しました。より高温では、より多くの病原体が出現する傾向があります。これらの要因を総合すると、人間の活動による気候変動を含む自然開発は、環境を破壊するだけでなく、新型コロナウイルス感染症のような新しい感染症発生の原因となっていることが明らかになっています。近年、大きな影響を与えた人獣共通感染症には、SARS、鳥インフルエンザA (H5N1) 、豚インフルエンザ (H1N1) 、エボラ、ニパウイルス(Nipah) 感染症などがあります。
「私たちの分析は、持続可能な開発が生態系を維持し、気候変動を遅らせるために重要であるだけではないことを示唆しています。 それは病気の制御、緩和、または予防に情報を与えることができます」と、ワード教授は述べています。「国レベルのデータを使用しているため、すべての国がこれらのモデルを使用して、将来のパンデミックの可能性を公衆衛生政策や計画に活用することができます。」
引用文献:
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Balbir B Singh et al. 2021 Mar 16 “Geodemography, environment and societal characteristics drive the global diversity of emerging, zoonotic and human pathogens” Transbound Emerg Dis.
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Emily Henderson. 2021 Mar 30 "Research finds key factors that could lead to further pandemics” News Medical Life Sciences.
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2021 Mar 30 "Factors that may predict next pandemic” The University of Sydney news release.
Vol.15 「日本と世界の新型コロナワクチン接種率の比較」
2021年5月14日 最終更新 セルスペクト(株)科学調査班編集
(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)
日本政府は4月上旬より、医療従事者への予防接種開始、つづいて、65歳以上の人々への接種を進めています。
調査によると、新型コロナウイルスのワクチンの受け入れ状況は、日本と諸外国とでは、大差はないようです。東京医科歯科大学のオンライン調査(2021年3月)によると、62.1%の人がワクチン接種を受けたいと回答しています。この結果は、2月に実施された共同通信の調査結果(ワクチン接種希望は63%)と、ほぼ同じでした。また、接種を希望している年齢層は40歳代と50歳代の女性が最も高い結果となりました。
一方で、現在、日本で1回以上接種した人の割合 (接種率) は、イギリスやアメリカなどと比べて大きく遅れをとっています。世界平均の6%、アジア平均の3%よりも低い状況です。この遅れは、単にワクチン承認に向けた国内承認や、接種準備だけではなく、欧州連合 (EU) の輸出規制なども影響しています。また、国内製薬メーカーによるワクチン開発も遅れています。(→アンジェス、第一三共、塩野義、KMバイオロジックスはすでに臨床試験を開始しているが、市場に出るまでにはまだ道のりがある。)
4月中旬の時点で、世界で最も予防接種率が高い国はイスラエル (61%) 、英国 (48%) 、米国 (37%) です。アジアで予防接種率が高い国は、シンガポール (19%) 、香港 (8%) 、インド (7.5%) 、中国 (6%) です。また、アジアでワクチン接種の進捗が最も少ない国はベトナム(0.06%)と台湾(0.1%)です。
予防接種が世界的に効果をあげていることを最初に示したのはイスラエルでした。同国は接種率でも、世界をリードしており、2月までに70歳以上の84%以上が2回接種を完了させています。また、ワクチン接種後には、重症者や死亡者は急速に減少したと発表されています。英国の別の調査でも同様の結果が示されています。
今では、ワクチンとウイルスの死闘となっています。新たな変異株が新たな脅威となっており、ワクチン接種の効果よりも、ウイルスの突然変異、季節、マスク使用の有効性、社会的距離の確保など、他の伝播性の要因も影響しています。やがて、ワクチン接種率の上昇により、世界中でパンデミックの負担が緩和されるはずです。しかし、再流行する中で医療システムへの負担は未だ軽減されているとは言えず、医師や看護師がワクチン接種スケジュールについていくことができないかもしれないという懸念があります。一方、東京五輪の開催が近づいていおり、ワクチン摂取率の向上を含めた感染防止のためのあらゆる対策が議論されています。

引用文献:
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.Balbir B Singh et al. 2021 Apr12 “Japan trails world in COVID vaccine rollout 2 months after its start” JapanToday News.
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2.Our World in Data (Oxford): https://ourworldindata.org/team
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3.Covid-19 Vaccination Tracker: https://www.pharmaceutical-technology.com/covid-19-vaccination-tracker/
Vol.16 「新型コロナウイルスワクチンの特許権放棄が議論の的になっている理由」
2021年5月21日 最終更新 セルスペクト(株)科学調査班編集
(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)
昨年10月、世界貿易機関 (WTO) に新型コロナウイルスワクチンの特許を免除するよう提案したのは、南アやインドなど58の発展途上国だ。この提案は多くの発展途上国によって支持されたが、高所得国の多くは反対した。米国、英国、カナダ、日本、EU諸国は、知的財産権の保護が科学的イノベーションの促進に重要な役割を果たしていること、特許の放棄が科学的イノベーションを妨げる可能性があることから、本提案を拒否しており、既に世界中で新型コロナウイルスワクチンの公平な利用を促進する 「COVAX」 が存在します。
しかし、今年5月5日、米国政府はそれまでの姿勢を覆し、新型コロナウイルスワクチンの特許権放棄を支持すると発表しました。同日、タイ米通商代表部代表は、 「安全で効果的なワクチンを一刻も早く普及させ、新型コロナウイルス感染症を終わらせるのが政府の方針だ」 と述べたが、なぜ米国は態度を変え、新型コロナウイルスワクチンの普及に力を入れるのか。
新型コロナウイルスワクチンの特許権放棄を支持する主な理由は、ワクチンの不公正な流通の現実にある。ニューヨーク・タイムズによると、世界では12億7000万回の予防接種が行われており、これは100人あたり16回に相当します。ワクチン接種の83%が高所得国と高中所得国で完了し、低所得国ではわずか0.3%でした。ワクチンの特許放棄に対する米国の態度が変わったのは、ここ数週間、米国政府が大きな圧力に直面しており、世界的なワクチン不足を緩和するための対策を外界が求めているためだと考えられています。アメリカの交渉戦略かもしれません。米国が本当に達成したいのは、ワクチンメーカーが自主的にワクチンの特許を共有したり、ワクチンの価格を引き下げたりすることだろう。
しかし、特許権を放棄したからといって、ワクチンの供給不足を解消することはできない。mRNAワクチンの開発には80から100件の特許がある。たとえこれらの特許がすべて取得されたとしても、ワクチンの製造方法の詳細を完全に理解することは不可能です。また、特許権の放棄により、ワクチン原料の供給が生産効率が低く、品質が疑わしい生産現場に流れてしまう可能性があり、偽造品や品質の劣るワクチンが世界のワクチン供給網に入り込むリスクがあります。
特許権の放棄以外に、世界中でワクチンの公平な流通を促進できるものは?「フィナンシャル・タイムズ」は、規制当局によってまだ承認されていない大量のアストラゼネカワクチン備蓄をする準備ができていると報じた。他の国も発展途上国に余剰したワクチンを供給することができる。短期的に達成できるもう一つの目標は、関係国が生産するワクチンや原材料の輸出規制の緩和である。
WHOは、技術移転を調整し、製薬会社と特許保有者がWHOを通じて他社にワクチン製造を認可するよう促している。世界的なパンデミックに対応できる未来志向の国際保健医療協力体制の確立が急務である。
引用文献:
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Ashutosh Pandey. 2021 May “Explainer: Why patents on COVID-19 vaccines are so contentious” Deutsche Welle News Release.
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2021 May “US support for waiving COVID-19 vaccine patent rights puts pressure on drugmakers – but what would a waiver actually look like?” The Conversation News Release.
Vol.17 「麻疹、ポリオ、BCGのワクチンはコロナウイルスに対する免疫を高める」
2021年5月21日 最終更新 セルスペクト(株)科学調査班編集
(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)
世界が新型コロナウイルスワクチン接種を待ちわびている中、一部の科学者たちは、すでに他の病気に使用されているワクチンが、新型コロナウイルスによって引き起こされるこの病気の最悪の影響から一定の保護効果をもたらすかどうかをテストしている。5月18日に、グローバル・ウイルス・ネットワーク (GVN) は、結核 (BCG)、麻疹、ポリオのためのそれらのような弱毒化生ワクチン (LAV) が、他の感染症を緩和する保護的自然免疫を誘導し、新型コロナウイルス感染症を含む感染症および将来のパンデミックの脅威に対する人体の自然緊急反応の引き金となる可能性があることを提案した。
グローバル・ウイルス・ネットワーク (Global Virus Network; GVN) は、35カ国、63のエクセレンスセンターと11の関連会社に所属するヒトおよび動物ウイルス学者とその同僚から構成される連合組織です。GVNの科学者たちは、生ワクチンがパンデミック曲線を曲げ、公衆衛生資源の枯渇を回避し、不必要な死を防ぐための重要なツールを提供し、研究されているメリットを前向きに示唆している。この見解は、有名な雑誌PNAS に発表されました。
ヒトの自然免疫応答は、侵入してくる新しい病原体に対する防御の最前線である。どのような感染の結果も、病原体と宿主防御系の間の競争に依存する。これまでの疫学的、臨床的、生物学的証拠のレビューは、既存の生ワクチン、すなわち広く有効なワクチンによる自然免疫の誘導は、コロナウイルスのような無関係の感染症を予防することができ、新興病原体によって引き起こされる流行を制御するために使用することができることを示唆している。LAVは、特定のワクチンが利用可能になるまで、そして特に新型コロナワクチンが世界の特定の国に到達していないときに、ギャップを埋めることができるため、これは特に重要です。
「新型コロナウイルスのように比較的早くワクチンを開発できた微生物の場合でも、安全で効果的なワクチンが世界中で生産、試験、流通、供給されるまでには、1年半から2年かかります。」と、カリフォルニア大学グローバルヘルスサイエンス研究所およびGVNの主要なグローバルヘルスエコノミストであるDean Jamison博士は述べています。「この時期には、数え切れないほどの命が失われ、世界経済は大混乱に陥っています。ワクチンの開発がより困難であったり、伝播がより迅速であったり、集団免疫を獲得することがより困難であったりする将来のパンデミックの場合、これはさらに悲劇的である。自然免疫を刺激する生ワクチンは、効果的なワクチンが広く利用できるようになるまでのつなぎの役割を果たす可能性がある」
「感染に対する保護に加えて、自然免疫刺激はまた、疾患の初期段階において治療的に使用される可能性、ならびに特異的適応免疫応答を促進するワクチンの有効性を高める可能性を有する。この可能性は理論的ではあるが、さらに研究する価値がある。」と、米国食品医薬品局 (FDA) ワクチン研究レビュー局の研究副局長であり、GVNセンター長である Konstantin Chumakov博士は述べた。「昨年、サイエンス誌に掲載された展望の中で述べたように、1960年代から1970年代にかけての経口ポリオウイルスワクチン (OPV) の研究は、非特異的な免疫防御を示し、OPVが季節性インフルエンザと急性呼吸器疾患の発生率を低下させることを明らかにした」。
2014年、ワクチンに関する専門家の戦略的諮問グループ (SAGE) の勧告により、世界保健機関 (WHO) の委託を受けたレビューにより、 、生ワクチンは小児死亡率を予想以上に低下させると結論付けられた。米国を含む高所得者層でも、最新のワクチンと同様に生ワクチンを接種すると、非標的型感染による入院リスクが半減することが観察された。
GVN氏によると、結核や天然痘に対する生ワクチンは長期生存率の向上と関連しているという。例えば、西アフリカで実施されたOPV予防接種では、全原因死亡率が25%低下し、追加投与毎に死亡率がさらに14%低下した。いくつかの基礎科学的知見は、SARS-1、SARS-CoV-2、MERSなどのコロナウイルスの制御における自然免疫の重要性を明らかにしている。さらに、コウモリによるコロナウイルスの制御は、耐性と耐性の間の自然免疫応答の適切なバランスと大きく関係している。新型コロナウイルス感染症の予防またはその重症度の軽減における生ワクチンの有効性を評価する厳格な試験を完了することは、科学的および公衆衛生の観点から極めて重要である。これらの試験から得られた知見は、将来のパンデミックに備えて生ワクチンをツールキットに組み込むことができるかどうか、またどのように組み込むかを明らかにするものです。
引用文献:
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Ashutosh Pandey. 2021 May “Explainer: Why patents on COVID-19 vaccines are so contentious” Deutsche Welle News Release.
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2. 2021 May “US support for waiving COVID-19 vaccine patent rights puts pressure on drugmakers – but what would a waiver actually look like?” The Conversation News Release.
Vol.18 「朗報:世界のデータから、新型コロナワクチンは効果がありそうだ」
2021年6月4日 最終更新 セルスペクト(株)科学調査班編集
(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)
世界中で新型コロナワクチン接種を積極的に行った結果、ワクチンの接種(2回接種完了)率が20%を超える国では、新規感染者数が激減しています(5月のデータ)。ウイルス変異株はまだ心配されていますが、防疫と制御は大きな進歩を遂げています。代表的な例をいくつか紹介します。
【イスラエル】
新型コロナワクチン接種に関しては、イスラエルが世界的なモデルとなっています。イスラエル保健政策研究機関紙によると、イスラエル政府はワクチンの購入と配布を直ちに実施、ワクチン接種の優先順位を明確にし、丁寧なワクチン接種促進活動を行った結果、迅速な成果を上げることができたと報じています。その大多数がファイザーワクチンの接種を受けており、経済も急速に回復させています。同国の保健省は5月24日、新型コロナウイルス感染症に対する国内の規制を解除すると発表しました。1月時点では1日あたり1万人の新規感染が発生していましたが、ワクチン接種が完了している5月24日の新規感染者はわずか12人でした。
【英国】
5月27日の時点で、人口の35%が2回目のワクチン接種が完了しています。確認された患者数は、ピーク時の1日約8万人から、現在では3,000人以下まで減少しました。新規感染が抑止されるにつれて、6人未満の屋内集会や30人未満の屋外集会を許可するなど、関連する社会的制限が徐々に緩和されています。バーや映画館、博物館などもオープンしています。
【米国】
米国の流行傾向は英国のそれと非常に類似しています。米国の成人の60%が少なくとも1回は接種しています。5月17日の発表によると、新型コロナウイルスによる死者が392人と報告され、7日間の平均死者数は550人を下回り、新規感染者数は、パンデミック発生当初いかにまで激減しました。
これまでの統計によれば、完全予防接種率(2回接種)が一定の水準 (約20%以上) に達し、適切な防疫政策や良好な衛生管理が実施されていれば、新規感染者数は確実に減少しています。
ただし、ワクチンによる免疫獲得には時間がかかることに注意しなければなりません。2回目の接種から約14日後には、ワクチンは良好な予防効果を示しますが、感染抑止効果は接種から遅れて発現する点に留意する必要があります。
【ワクチン接種の効果が上がっていない地域もある】
インド洋に位置するアフリカの島国セーシェル共和国では、完全予防接種率が世界で最も高く、全接種人口の60%を占めていますが、これまでのところ大規模な感染が続いています。「ニューヨークタイムズ」の報告によると、セーシェルで完全にワクチン接種を受けた人口の60%のうち、57%が中国シノファーム社ワクチンの接種を受け、43%がアストラゼネカ社ワクチンの接種を受けたと言われています。WHO(世界保健機関)は、この理由を調査するために懸命に努力している旨を発表しています。
集団免疫を獲得するには、今のところワクチン接種が最善の方法です。新型コロナウイルス感染症に対する集団免疫を得るためには全集団の60%-70%がワクチン接種を受ける必要があると考えられています。しかしながら、一方では、変異株の感染性が高まるにつれて、集団免疫を獲得するために必要なワクチン接種率をさらに上げる必要があると指摘されています。しかし、宗教的な要因や政府への不信、ワクチンの安全性への疑問などが絡んでくるため、これを達するのは容易ではありません。ほとんどの国で、約3割の市民が、ワクチン接種を受けたくないとのデータもあります。専門家たちは、このウイルスは自然に消滅する可能性が低いため、この脅威を低下させるための唯一の手段として、ワクチン接種しかないと述べています。
引用文献:
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Reuters: http://reuters.com/
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The Israeli Journal of Health Policy Research
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Our World in Data: Coronavirus (COVID-19) Cases
Vol.19 「危ない?インド変異株」
2021年6月11日 最終更新 セルスペクト(株)科学調査班編集
(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)
新型コロナウイルスの変異株が、世界中で出現し、世論を騒がせている。この騒ぎから、世界保健機構(WHO)は5月、変異株の中でも、特に蔓延が懸念されるものを「VOC」と、それほど懸念は無いが、まずまず注視すべきものを「VOI」と、ランク付けした。
「VOC」は、高い感染力があり、重症化するリスクがある変異株。「VOI」は、多少の感染力はあるものの、従来のコロナの重症化率と差が見られない。つまり、重症化への明確な根拠がない変異株を示すことにした。
5月中旬には、インド変異株 (SARS-CoV-2 B.1.617.2)を、「VOC」と発表。この変異株は、インドで初めて発見され、その後イギリスでも検出された。以後、この2国では、それまで蔓延していたイギリス変異株が消え去り、ほぼ全てが、この変異株と置き換わったことから、極めて感染力の高い変異株と判断された。
こうした状況下でWHOは、現在流通しているワクチンが、十分に効かない可能性があると発表した。フランスのパスツール研究所も、「インド変異株に対しては、ファイザー社とアストラゼネカ社のワクチンの効力が低下する」と、公表している。イギリスの研究所「Francis Crick Institute」によると、ファイザー社のワクチンを接種した人は、インドの変異株に対する抗体が、5分の1以下になっている可能性が高いと示した。
そんな中で、ロンドンのインペリアル・カレッジは、コロナウイルスの表面にあるトゲのような部分「スパイクタンパク質」の681番目のアミノ酸が、インド変異株では突然変異していると発表。この変異によって、ウイルスの感染力と複製性(増殖)が高まったとしている。
インド変異株が発生する前のコロナウイルスは、病原性を高める3要素「感染性」「複製性」「毒性」のうち、感染性が際立っていた。しかし、インド変異株は、複製性も高いことが、上記の研究ではっきりした。これは、ワクチンや治療薬の開発の知見になりそうだ。
日本でも最近、このインド株が確認されている。ワクチン接種が普及されつつあるが、この変異株の流入に注視したい。

引用文献:
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WHO: Tracking SARS-CoV-2 variants: https://www.who.int/en/activities/tracking-SARS-CoV-2-variants/
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CDC: SARS-CoV-2 Variant Classifications and Definitions: https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/variants/variant-info.html#Consequence
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European Centre for Disease Prevention and Control: https://www.ecdc.europa.eu/en/covid-19/variants-concern
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Thomas P. Peacock et al. 2021 May 28 “The SARS-CoV-2 variants associated with infections in India, B.1.617, show enhanced spike cleavage by furin” bioRxiv.
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Emma C Wall et al. 2021 June 3 “Neutralising antibody activity against SARS-CoV-2 VOCs B.1.617.2 and B.1.351 by BNT162b2 vaccination” The Lancet.
Vol.20 「新型コロナ変異株を食い止める:科学者たちの4つの提案」
2021年6月25日 最終更新 セルスペクト(株)科学調査班編集
(注意:より専門的な内容については“(→ )”内に記載しました。こちらは、読み飛ばしてください。)
世界最大級のバイオテクノロジー展示会「BIO Digital 2021」が、6月14~18日にオンライン上で開かれ、バイオテクノロジー(生物工学)のツールで、新型コロナウイルスの収束に役立ったものが示された。その中で専門家らが提示した、コロナの変異株に効果的とされる4つの対策を紹介する。
◆リアルタイムの情報共有、専門家同士のネットワークを世界に広げる
米国保健省予防・対応次官(ASPR) は、流行地域やウイルスの遺伝子型が、急速に変化する中では、ウイルスの「監視」が重要と強調した。
感染症の動向を把握したり、対策の効果を判定する監視「サーベイランス」を例に挙げ、症例だけなく、ウイルスの遺伝子型(配列)を、全世界で共有する必要があるとした。
この1年で、病院への通知システムや治療薬、診断薬などのサプライチェーンを大幅に改善した米国も、「ウイルスの遺伝子配列を全世界で共有すれば、効果的に変異株の流行を抑えられる」と言っている。
◆ワクチンだけでなく、ウイルス遺伝子(RNA)を直接攻撃する治療薬が必要
世界中でワクチンが開発されているが、変異株をすべて網羅することは難しい。世界最大手の製薬会社「MSD Global Pharmaceuticals」の社長は、ウイルスのスパイクタンパク質をターゲットにした現在の治療薬や、ワクチンでは、収束には不十分とした。ウイルス遺伝子全体を攻撃して、機能を破壊する薬剤が、変異株に有効で、それが収束につながると示した。
◆抗体を体内に注入する医薬品(抗体薬品)は、「筋肉注射」をトレンドに
新型コロナウイルスの抗体薬品は、すべて静脈注射で注入される。それを、筋肉注射に変えれば、注入する薬剤量を大幅に減らせる。また、筋肉注射方式にすれば、複数の抗体を混合した治療薬の注入も可能になり、抗体の有効性が高まると期待される。
◆低所得国における医療インフラの整備
医療資源が乏しい低所得国は、治療薬の実証研究や、感染の有無を調べる検査の実施が難しい状況にある。低コストでそれらができれば、低所得国に対する医療資源の普及が実現し、ウイルスの流行や変異株の出現を防ぐことができる。
変異株の流行阻止、パンデミックの収束に必要な政府の姿勢
世界大手の検査機器メーカー「Roche(ロシュ)」の連邦保健政策担当ディレクターは、検査は、感染者の早期発見と隔離につながり、感染拡大を抑制する機能を持つことから、検査自体が「パンデミック(世界的大流行)の早期収束に役立つ」と強調した。
それに加え、一度に大量に検査する「ハイスループット検査」を活用しながら、医療機関や患者に迅速に結果を伝えるデジタルシステム(IT化)を構築することが、感染拡大を防ぐ鍵と説いた。
「各国政府は、一般家庭や医療機関で使う検査アイテムの緊急的な薬事承認制度を、積極的に作ること。また、世界中に輸出できるよう、自国の輸出関連会社と連携すべき」とした。
さらに、革新的な検査アイテムを開発し続けるためには、スピーディな承認審査を実施しながら、開発企業に対する投資を積極的に行う必要があると示した。
つまり、パンデミックを収束させるには、国が優れた検査機器と検査能力を常備することが、必要不可欠といっている。
引用文献:
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Bio Digital 2021: https://www.bio.org/events/bio-digital
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Bio Digital section: Diagnosing the Future: The Impact of the COVID-19 Pandemic on Diagnostics