尿中バイオピリン検査
尿中バイオピリン(生化学的心理ストレス)検査の臨床的意義
心理ストレスを受けると、活性酸素種により細胞が傷害を受けます。
このとき、ストレス応答遺伝子ヘムオキシゲナーゼ-1により、ヘムタンパク質の分解が促進され、抗酸化物質であるビリルビンが生成れます。
ビリルビンは活性酸素種を消去すると同時に、分解物であるバイオピリンを生成、これが尿中に排泄されます。このときの尿中のバイオピリンを特異抗体であるmAb24G7 のELISA 法により、その濃度を測定することができます。
バイオピリンの生成経路
○ 精神疾患発症危険状態(At Risk Mental State;以下 ARMS)、うつ病、統合失調症では尿中バイオピリンが3単位以上の
高値を示します。
(10単位以上の場合は心理ストレス以外に応答する症例として、敗血症、心不全、心筋梗塞などのケースがあります。)
○ 尿中バイオピリンは、その心理ストレスのステージにおいて、急性期、亜急性期、回復期で減少していくので、
経過管理に役立ちます。
尿中バイオピリン測定値(単位:μmol /g Cre)
健常者群に対するARMS 群のROC 解析結果
尿中バイオピリン(生化学的心理ストレス)検査のご案内
1. どんな検査ですか?
尿中バイオピリン(生化学的心理ストレス)検査は、心理的ストレスのレベルを評価する
ものです。体の細胞は心理的ストレスを受けることで酸化しやすくなります。
このとき、酸化を防ぐためにビリルビンという物質が体の中で作られます。
ビリルビンは酸化物質を掃除すると同時に分解します。
この分解物がバイオピリンです。
バイオピリンは尿から検出することができるので、痛みを伴わず採尿だけで検査することができます。
この検査結果を基に、ストレス軽減のための対策を講じたり、主治医のカウンセリングやお薬による治療の評価に活用します。
簡単な尿検査でストレスの影響を把握できるので、心身の健康管理にとても役立ちます。
2. 尿中バイオピリン検査の目的
尿中バイオピリン検査は、尿中にどれだけバイオピリンがあるかを調べます。
この検査で、ストレスによる身体への影響を知ったり、治療がどれだけ効いているかを調べます。
3. 検査の結果とその意味
尿中バイオピリンの値が「2単位未満」の場合(ー)
心理的にストレスをあまり感じていない、もしくは、健常な方のほとんどが、2単位未満であることが知られています。
尿中バイオピリンが 「2単位から3単位未満」の場合(+)
心理的にストレスを感じ、何らかの身体への変調の自覚があるケースです。
ただし、心身が健常な妊婦さんの場合は、3単位になることもあります。
尿中バイオピリンが 「3単位から5単位未満」の場合(++)
心理的なストレスを感じ、身体への不調、もしくはARMS(精神疾患発症危険状態)の患者さんのケースでは3単位から5単位未満
であることが知られています。
尿中バイオピリンが 「5単位以上」の場合(+++)
心理的ストレスや身体への不調を強く感じている、もしくは心理的な疾患に至っており早期に
治療介入を要するケースで統合失調症や心理的な疾患の急性期、亜急性期のケースでは5単位以上となることがあります。
(10単位以上の場合は、内科・循環器系の疾患である可能性があるので、 専門医の診察を受けることをお勧めいたします。)
4. 他の検査方法、および他の疾患との関係
BPRS スコア等の問診型の検査と尿中バイオピリン検査値とで、うつ病においては相関があります。
また、統合失調症においては強い相関が認められます。
心筋梗塞・心不全等の循環器疾患、敗血症、喘息等の強いアレルギー症状を保有する場合においては尿中バイオピリン値が
高値に検出される場合があります。
治療効果の評価: うつ病や統合失調症では、急性期、亜急性期、回復期において、
尿中バイオピリン値は徐々に減少していくことが認められます。
5. 検査の手順
尿中バイオピリン検査の手順は以下の通りです。
採尿:一般的な尿検査と同じです。
検査結果の評価:臨床検査所で検査、測定した後、主治医を通じて結果を報告します。
6. Q & A
Q: 検査は痛いですか?
A: 尿を紙コップに採るだけなので痛みはありません。
Q: 検査の費用はどのくらいですか?
A: 費用は病院によって異なります。詳しくは主治医にお尋ねください。
Q: 結果はどのくらいでわかりますか?
A: 通常、結果が出るまでに1~2週間ほどかかります。
尿中バイオピリン検査は、心理ストレスを客観的に知ることができるので、治療の経過の管理にとても役立ちます。
他の検査方法と併用することで、より正確で包括的な情報を得ることができます。
ご質問やわからないことがあれば、どうぞお気軽に当院の主治医にお尋ねください。